2002/04/06 07 海底遺跡を守ろう/上/山田文比古/「水中遺産」保護条例を 与那国島の沖合にある「海底遺跡」が発見されて、十年近くが経過しようとしている。この間ダイビング雑誌やテレビの特集番組等で度々紹介された結果、多くのダイバーや観光客が押し寄せていると聞く。そのこと自体は、地元の振興につながることなので大変結構なことと思うが、訪れる人々の中には時に不心得者がいて、「遺跡」の一部を叩き割り、サンプルとして持ち出したというケースも報告されている。こうした無秩序状態が続けば、せっかくの文化遺産が台無しになってしまうことが懸念される。何らかの保護と規制の枠組みを整備し、そうした取り組みを通じながら観光資源としての活用も図っていく、ということが考えられないか。こうした問題意識は以前から一部の関係者には認識されていたが、具体的な解決策にはたどり着いていないのが実情である。そのネックになっているのは、「海底遺跡」が本当に「遺跡」と認定できるのかということについて、文化行政当局や識者の理解を得られていないことである。文化財保護法に定める「遺跡」として認定できなければ、保護や規制の根拠がなく、従って何ともしようがない、ということなのであろう。あれが人工物である、あるいは少なくとも自然物でないということについては、いまや異議を唱える人はいないと思う。この点については木村琉球大学教授が既に明確に答えを出している。では、あの水中の人工物が「遺跡」であると言えるか、と問われれば、少なくとも現行の文化財保護法の定義上は難しそうだ、と言わざるを得ない。文化財保護法は何十年も前に作られたもので、最近の科学技術の発達の成果として発見されてきた事実、例えば与那国の「海底遺跡」のようなものは全く想定されていないのである。文化行政当局者の戸惑いも分からないではない。であれば、現行法という土俵で戦ってもあまり意味がない。むしろ、新たな状況に対応した新たな法令を制定し、新たな枠組みを作ればよいのではないか。言うまでもなく、地方自治体には条例制定権が認められている。国がやらないのなら、自治体の方でやればよい、という考え方はできないか。ズバリ申し上げると、私は、沖縄県ないし地元自治体が水中文化遺産保護条例を制定することを提唱したい。次回の本稿において、それが決して荒唐無稽(こうとうむけい)な話ではないことを説明したい。(元沖縄県サミット推進事務局長) |
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